部屋探しをしていると敷金も礼金も必要ない「敷金礼金ゼロ物件」を見かけることがあります。
業界では「ゼロゼロ物件」と呼んだりもしますが、通常賃貸で部屋を借りる際には多額のお金がかかるので、安く借りられるのは大変魅力的です。
初期費用はある程度まとまったお金が必要になるので「月々の家賃は払えるけど、今はまだ貯金がない」といったように、初期費用がネックで一人暮らしや引っ越しを諦めてしまう人も多いと思います。
「敷金礼金ゼロ物件って安く借りられるみたいだけど、実際のところどうなの?」と思っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、敷金礼金ゼロ物件は本当にお得なのか、メリットとデメリット、また借りる際の注意点などをご紹介したいと思います。
「敷金礼金ゼロ物件」のメリット
敷金礼金ゼロ物件のメリットは、何と言っても初期費用が安く抑えられる点だと思います。
通常、賃貸で部屋を借りる際には、家賃の6ヶ月分程度の初期費用がかかります。
初期費用は敷金、礼金、仲介手数料、入居月の日割り家賃、翌月の前家賃、鍵交換代などです。
例えば、家賃が6万円の物件を借りようとすると、36万円程度の初期費用がかかる計算になります。
敷金礼金がそれぞれ家賃の1ヶ月分だとすると、家賃の2ヶ月分の12万円が浮くことになるので、これはかなり大きいです。
まとまったお金はないけどすぐに引っ越ししなければいけない場合などは非常に助かります。
「敷金礼金ゼロ物件」のデメリット
初期費用を安く抑えて部屋が借りられるのは非常にありがたいのですが、美味しい話に裏は付き物です。
敷金礼金ゼロ物件は本当にお得なのか?
そのデメリットについてご紹介したいと思います。
物件が希少
敷金礼金ゼロ物件はまず、物件の数が少ないです。
地域によってその割合にもかなりの差がありますが、概ね10%前後といったところでしょうか。
都市部や高級住宅街など、地域所得の高い地域は特に少なく、人口減少の激しい地方都市などの地域に多い傾向があります。
部屋探しの段階で「敷金礼金ゼロ物件」に絞るのは、選択肢が極端に減るのであまりおすすめできません。
「部屋を探していて気に入った物件がたまたま敷金礼金ゼロ物件だった」というのが理想です。
退去時に必ず支払いが発生する
私が思う敷金礼金ゼロ物件の最大のデメリットは「敷金を預けないリスク」だと思います。
敷金は「家賃の担保」として大家さんに預けるお金ですので、家賃滞納がなければ本来は退去時に全額戻ってくるお金です。
礼金は戻ってこないお金なので無い方が良いです。
敷金は家賃滞納が無ければ本来退去時に全額戻ってくるお金ですが、借主負担分の原状回復費用(修繕費)が発生した場合は、それを差し引いて返還されるのが一般的です。
最近では退去時にハウスクリーニング代を全額借主負担とする特約が契約書に書かれていることが多いです。
敷金を全く預けていないということは、原状回復費用(修繕費)の支払いが発生した場合や、ハウスクリーニング代や畳の表替え費用などの退去費用を現金や振り込みで支払う必要があります。
つまり、退去時に必ず支払いが発生するということです。
他のサイトでは「敷金礼金ゼロ物件は退去時に高額な費用を請求される」と書いているのを目にしますが、それはちょっと語弊があると思います。
敷金礼金ゼロ物件だから高額な退去費用が請求されるように受け取れますが、どの賃貸物件でも多少の原状回復費用を請求されることはありますし、ハウスクリーニング代などの退去時に係る費用はちゃんと契約書に記載されています。
これらの退去費用は敷金から引かれても退去時に支払っても、前払いか後払いかの違いです。
しかし、退去時には引っ越し先の契約金なども必要ですから、新居と旧居両方で支払いが発生するのはかなり痛いです。
これが「敷金を預けないリスク」だと私は思います。
家賃が割高
全ての物件に該当する訳ではありませんが、敷金礼金ゼロ物件は相場より家賃が割高に設定されている場合があります。
本来最初に支払うはずだった敷金礼金などの初期費用を、見た目上無くしておくことで集客し、家賃に上乗せすることで回収するというカラクリです。
つまり、初期費用を最初に払うか、毎月分割で払うかの違いです。
この場合、長く住めば住むほど入居者は損をすることになります。
敷金礼金ゼロ物件を借りる時は、近隣の同じような物件と比較して、相場より高くないかを確認するようにしましょう。
有料オプションサービスの加入が必須
全ての敷金礼金ゼロ物件が該当する訳ではありませんが、有料オプションサービスへの加入が必須になっているところがあります。
例えば、抗菌消臭費、24時間緊急対応サービス、家賃保証会社加入、鍵交換などです。
特に24時間緊急対応サービスや家賃保証会社は加入することで不動産屋が代理店報酬を得るために必須にしており、外せない場合があります。
人気がない売れ残り物件
築浅だったり、立地が良かったり、最新設備が充実しているような物件は、わざわざ敷金礼金をなしにしなくても借り手は付きます。
なぜ敷金礼金ゼロ物件が存在するのかというと、大家さんの空き部屋対策です。
築が古かったり、立地が悪かったり、設備が悪かったりすると、人気が無く借り手が付きません。
大家さんは部屋を借りてもらえないと家賃収入が得られないばかりでなく、収入がなくても固定資産税などの経費を支払わなければいけないので、赤字になるのです。
その空き部屋対策の一環として、敷金礼金をなしにして入居しやすくしているのです。
上記で敷金礼金ゼロ物件は都市部や高級住宅街など、地域所得の高い地域は特に少なく、人口減少の激しい地方都市などの地域に多い傾向があると説明したのも、このような背景があるからです。
全ての敷金礼金ゼロ物件が人気のない売れ残り物件ではありませんが、借りる際には立地や設備等の条件をよく見極める必要があります。
近隣住人の質が低い
敷金礼金ゼロ物件は初期費用が抑えられる分「借りやすい」「入居しやすい」という特徴ありますが、借りやすい物件には質の低い住人が住んでいる可能性があります。
敷金礼金ゼロ物件に限った話ではないですが、審査が甘いとか、安く借りられる物件は、生活マナーが悪かったり、モラルの低い住人が多い傾向があると思います。
そうするとトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
内見時には部屋の中だけでなく、どのような人が住んでいるのかもチェックした方が良いと思います。
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私も「敷金礼金ゼロ物件」に住んでいました
実は、私が前回住んでいたアパートも「敷金礼金ゼロ物件」でした。
現在は敷金・礼金・仲介手数料も無料の「トリプルゼロ物件」に住んでいます。
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今まで敷金礼金ゼロ物件は敬遠していましたが、前回住んだ物件は築が古い訳でもなく、立地が悪い訳でもなく、設備が悪い訳でもありませんでした。
むしろ設備は他の物件に比べるといい方ですし、家賃も相場より少し安いぐらいの好物件でした。
何でこんな好物件が敷金礼金ゼロなのか疑問に思いましたが、土地柄的に若い人は都内に出て行ってしまうので元々の借り手が少ない地域だと思いますし、人気獲得のために大家さんは他の物件との差別化を図りたかったのだと思います。
唯一残念だったのは、近隣住人の問題です。
共用部分に私物を置いたり自転車を停めて通行の妨げになっている世帯がありましたし、一番困ったのは上の階の住人の騒音被害に悩んだことです。
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こればっかりは運の問題で、敷金礼金ゼロ物件だからという訳ではないですけどね。
どこでも起こりうる問題です。
話を戻しまして、そこは通常入居するだけだと敷金礼金ゼロですが、ペット可物件なのでペットを飼う場合は敷金を1ヶ月分預けることになります。
うちには猫がおりますので敷金1ヶ月分が発生しましたが、それでもお得でした。
鍵交換も断りましたし、他のオプション的な必須費用もほぼ無かったので、敷金1ヶ月でも安く入居できたと思います。
しかし、私は家賃交渉で家賃を2,000円下げてもらう代わりに、敷金を2ヶ月分預けました。
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敷金2ヶ月分を前払いしてあるので初期費用は多少高くつきましたが、退去時にはハウスクリーニング代が引かれた程度で、敷金はちゃんと返ってきました。
まとめ
敷金礼金ゼロ物件の全てが「結果的に損をする物件」「落とし穴がある物件」ではないことがお分かり頂けたでしょうか?
確かにそういう物件も存在するので見極めが大切だと思います。
結局は敷金礼金に代わるお金を前払いするか、月々の分割で支払うか、後払いにするかの違いだと思います。
私は敷金礼金ゼロ物件でも、余裕があれば敷金は最低1ヶ月分、自分から預けておくことをおすすめします。
敷金礼金ゼロ物件に入居をお考えの方は、条件や環境をしっかりと見極め、入居から退去するまでのトータルでお得になるかを計算してみると良いと思います。
皆様のお部屋探しの参考になれば幸いです。