お部屋探しをしている時、「仲介手数料無料!」や「仲介手数料半額!」という言葉をよく目にすると思います。
仲介手数料は大家さんと入居者(アナタ)の橋渡しをしてくれた不動産屋に報酬として支払うものです。
仲介専門の不動産会社ではこの仲介手数料で収益を得ています。
借りる側は仲介手数料が無料や半額だったら初期費用を抑えられてありがたいですが、それって本当にお得なのでしょうか?
そもそも仲介手数料を無料にしたら不動産会社の儲けはないですから、これで経営が成り立つのはおかしいですよね。
飲食店が「タダで食べ放題!」と謳っているようなもんです。
この記事では仲介手数料の無料や半額は本当にお得なのかを解説したいと思います。
仲介手数料を値下げできる理由とは?
不動産屋が受け取れる仲介手数料は最大で「家賃の1ヶ月分(+消費税)まで」と法律で定められています。
貸主と借主の双方から受け取る場合でも、合計で家賃の1ヶ月分(+消費税)までです。
つまり、誰から受け取ろうが「仲介手数料」という名目で受け取れる金額は最大で家賃の1ヶ月分(+消費税)までなのです。
では、不動産屋は最大でも家賃の1ヶ月分しか仲介手数料を受け取れないのに、どうしてそれを無料や半額にできるでしょうか。
それは、大家さんなどから別の名目でお金をもらっているからです。
先ほども言いましたが「仲介手数料」という名目で受け取れる金額は最大で家賃の1ヶ月分までです。
ということは、「別の名目」ならもっとお金を受け取ることができるということです。
その代表的なものが「広告料」と「代理店報酬」です。
広告料
物件によっては入居者を見つけてくれた報酬として、大家さんから広告料を受け取れる物件があるのです。
この広告料が家賃の2ヶ月分だった場合、仲介手数料を無料にしても仲介手数料×2倍の収益が出ています。
広告料が家賃の1ヶ月分だったとしても、入居者から仲介手数料の半額を受け取れば、仲介手数料×1.5倍の収益です。
代理店報酬
仲介手数料が無料や半額の物件は、有料オプションサービスへの加入が必須になっている場合がほとんどです。
例えば、鍵交換、抗菌消臭費、火災保険(家財保険)、24時間緊急対応サービス、家賃保証会社の加入などです。
通常火災(家財)保険以外は任意ですので「要りません」と言えば加入しなくても良いものですが、不動産屋が必須と定めていて「要らない」と言っても外してくれない場合があります。
これは、そのサービスに加入させることで不動産屋が代理店報酬を得ているからです。
複数のオプションサービスに加入させられると損をする気がしますが、良く考えるとそんなに損でもない場合もあります。
仲介手数料は通常家賃の1ヶ月分ですが、24時間緊急対応サービスなどは2年で15,000円程度ですし、家賃保証会社は入会金が家賃の何十%かかりますが、加入すれば連帯保証人を立てる必要がないので手軽といえば手軽です。
良心的な不動産会社ならこの代理店報酬を仲介手数料や保証会社の入会金に充当してくれるところもあります。
加入させられるオプションサービスの合計額が家賃1ヶ月分を超えなければお得と言えると思います。
割高な初期費用
入居前に必要な初期費用の中に、「鍵交換費用」「抗菌消臭費」「害虫駆除費」「事務手数料」「書類作成費」など、様々な費用があります。
別に必要のない費用まで勝手に組み込まれている場合があります。
悪質な不動産屋はこれらの費用を実際より割高に設定し、差額を利益にしている場合もあります。
鍵交換って本当にしてるの?
害虫駆除ってバル〇ン炊くだけでしょ?
書類の作成にそんなにお金取るの!?
など、疑わしい費用もあります。
これらの費用は10,000円前後しますから、塵も積もれば…です。
何も言わないとそのまま請求されてしまうので、必要ないものは「要らない」と言って外してもらいましょう。
自社物件
仲介手数料は不動産屋が大家さんと入居者を仲介した場合に発生する成功報酬です。
結婚式でいうところの新郎と新婦の仲をとりもった「仲人」みたいなものですね。
では、仲人を介さずに新郎と新婦が出会ったらどうでしょう?
賃貸の世界でも、仲介業者を間に入れずに大家さんと入居者が出会うことができます。
それは、大家さん自身が自分で入居者を募集する場合です。
大家さんが不動産屋の場合などがほどんどだと思いますが、この場合、賃貸サイトの取引態様が「貸主」と表記されています。
取引態様は圧倒的に「仲介」や「媒介」が多いので、私はあまり目にしたことがないですが。
不動産会社の自社物件や、物件の所有者から一括借り上げした物件を貸し出す場合も取引態様は「貸主」になります。
この場合、貸主と借主の間に仲介業者はいませんので、そもそも仲介手数料が発生しないというわけです。
つまり、本当に仲介手数料を本当に無料にできるのは貸主の自社物件だけということです。
取引態様が「貸主」以外で仲介手数料が無料なら、上記で説明した広告料をもらっているか、仲介手数料に代わる費用を違う名目で請求されるか、強制加入させられるオプションサービスで代理店報酬を得ていると考えられます。
分かりやすい例でいうと「UR賃貸住宅」なんかがそうです。
URはあちこちに営業センターや店舗があり入居の受付をしています。
URの賃貸住宅はURの自社物件なので仲介手数料が発生しないのです。
UR賃貸住宅については下記の記事をご覧ください。
違約金に注意
仲介手数料が無料や半額の物件の場合、解約時に違約金が発生する場合が多いです。
通常、1年以内の解約で家賃2ヶ月分、1年以上2年未満の解約で家賃1ヶ月分が相場です。
2年以上住めばいつ解約しても違約金は発生しませんが、物件によりけりなところもあるので契約時にしっかり確認しておきましょう。
ちょっと待って!その「広告料」アナタが払ってるかも?
仲介手数料を値引きできるカラクリは色々なパターンがあります。
不動産屋が大家さんとどのような関係にあるかによっても変わってきますが、根本は「違う名目で入ってくるお金があるから」に他なりません。
こう見ると、一番負担が大きいのは広告料を支払う大家さんのように見えますが、そうとは限りません。
「仲介手数料半額! 敷金1ヶ月、礼金1ヶ月」
仲介手数料半額に惹かれ、こういう物件で契約してしまうと広告料はアナタが支払うことになっているかもしれません。
そのカラクリは「礼金」です。
敷金は退去時に返ってくるお金ですが、礼金は返ってきません。
アナタが支払った「礼金」は、部屋を貸してくれたお礼として大家さんに渡りますが、それがそっくりそのまま「広告料」と名前を変えて不動産屋に支払われる場合があります。
「部屋を貸してくれてありがとう」→「入居者を見つけてくれてありがとう」とスライドされるのです。
仮に家賃60,000円としてお金の流れを整理してみましょう。
【アナタ】
礼金 -60,000円
仲介手数料 -30,000円
合計 -90,000円
【大家さん】
礼金 +60,000円
広告料 -60,000円
合計 0円
【不動産屋】
広告料 +60,000円
仲介手数料 +30,000円
合計 +90,000円
なんと!
結局アナタが支払った90,000円は全て不動産屋に流れているではありませんか!!!
よく見ると大家さんはプラマイゼロですし…。
仲介手数料半額のはずが、蓋を開けてみれば1.5ヶ月分も払ってしまっています。
なんだか上手くハメられた気がしますよね。
仲介手数料が無料だった場合でも、礼金があれば間違いなく広告料に充当されるでしょう。
まとめ
仲介手数料の無料や半額の物件が全て悪い訳ではありません。
条件をよく確かめて上手に利用すれば初期費用を抑えられ、お得に入居することができると思います。
上記でも説明しましたが、不動産屋はタダでは成り立ちませんから「仲介手数料」は名目を変えて必ず入るように工夫されています。
建前上は値引きしているように見えても、本質は値引きできないものなのです。
これに気付かず、「無料」や「半額」の言葉に飛びついてしまうと結果的に損をしてしまう可能性があることに私は警鐘を鳴らしています。
私は仲介手数料は「新しい住まいをお世話してくれたお礼」として不動産屋の営業マンに支払うべきものだと思っています。
どうせ値切れない費用ですから、こんな回りくどいカラクリに翻弄されず、潔く仲介手数料は支払った方が無難なのではないでしょうか。
皆様のお部屋探しの参考にして頂ければ幸いです。