賃貸サイトで物件を検索していると、極端に家賃の安い物件が掲載されていることがあります。
築年40年以上の風呂トイレなし、和室4.5畳一間とかなら家賃が安いのも分かりますが、普通のマンションやアパートで相場より極端に安い家賃だと注意が必要です。
もしかするとそれは「事故物件」かもしれません。
事故物件は家賃が相場の20%~50%程度安くなるので、過去にその部屋で何があったかなどを全く気にしない人にとってはとてもお得な物件になります。
実際に家賃を浮かせるために事故物件を自ら選んで住む人もいます。
事故物件と聞くと怖い、不気味といったイメージを抱く方が多いと思いますが、意外と需要があるのです。
この記事では、賃貸の事故物件について詳しくご紹介したいと思います。
事故物件とは
事故物件とは、瑕疵(かし)がある物件のことを言います。
瑕疵とは傷や欠陥という意味で、建物や構造に欠陥がある「物理的瑕疵」と、過去にその物件で殺人や自殺、病気や事故、火災などで人が亡くなっている事実があり、居住することに抵抗感や嫌悪感を感じる「心理的瑕疵」に分けられます、
一般的には後者の心理的瑕疵がある物件を「事故物件」と呼ぶことが多く、多くの方が「事故物件」と聞くと「何らかの理由で人が亡くなった物件」だという認識はあるのではないでしょうか。
心理的瑕疵とは
心理的瑕疵(しんりてきかし)とは、その事実を知ることで心理的に嫌悪感や抵抗感、精神的苦痛を抱くことを言います。
「その事実を知っていたら最初から借りなかった」というような条件がこれに該当します。
人が亡くなっている以外にも、嫌悪施設(火葬場や工場、ゴミ処理場など)に隣接している場合には心理的瑕疵物件となります。
他にも近隣に反社会的勢力(暴力団)の事務所がある場合や、宗教施設がある場合も心理的瑕疵物件となります。
賃貸サイトの備考欄などに「心理的瑕疵あり」や「告知事項あり」と記載されていたら事故物件または心理的瑕疵物件の可能性が高いです。
告知義務
心理的瑕疵の告知義務は不動産売買と賃貸の場合で異なります。
不動産売買の場合は大きなお金が動くので告知義務についても細かく規定があるのですが、賃貸の場合は明確な決まりがなくケースバイケースです。
一般的には、事故があった次の入居者には告知義務があるが、その次の入居者からは告知の必要がないというのが業界のルールのようです。
つまり、事故が起きた物件に一度でも誰かが住めば、それ以降は告知しなくても良いとされているのです。
これを悪用し、事故物件を一時的に関係者に借りさせ、告知義務を無くしてからその後何事もなかったように一般入居者を募集する不動産屋もあるようです。
そう考えると、自分が今住んでいる物件も事故物件だった可能性はゼロではないということですね。
とはいえ、不動産屋が告知しなかったとしても今はネットやご近所さんからの情報などで事故があったことが入居者に知れることは容易に想像できますし、告知せずに借りさせて後でトラブルになるのは目に見えていますから、不動産屋もそこは慎重になると思います。
全国の事故物件情報が掲載されている「大島てる」という有名なサイトがあります。
自宅付近を検索してみると意外にも事故物件が多いことに驚きます。
アナタのおうちは大丈夫ですか?
事故物件は家賃が格安
冒頭でも説明した通り、事故物件の家賃は相場の20%~50%程度安くなるので、過去にその部屋で人が亡くなっていても全く気にしないという人にとってはとてもお得な物件になります。
駆け出しの芸能人やお笑い芸人など、収入が少ない人にとっては家賃はかなりの負担になるため、自ら選んで事故物件に住むという人もいます。
事故物件と言えども、精神的瑕疵の度合いによって家賃の値引き幅も変わってきます。
近年単身高齢者の孤独死が社会問題になっていますが、人は遅かれ早かれいずれ亡くなるものですから、それが病院で亡くなるのか自宅で亡くなるのかの違いだと私は思います。
自宅で倒れて救急搬送中に亡くなった場合は室内で亡くなったことにはならないので告知すらされないですし、自然死の場合ですぐに発見されれば告知されないこともあるようです。
しかし、自宅で亡くなった後発見が遅れ、遺体の腐敗が進んでしまうと事故物件となり、大規模なリフォームと告知義務が発生します。
事故物件の多くは単身者の病死が原因のものが多いですが、中には火災による死亡や、殺人・自殺があった物件もあり、その場合は家賃の値引き幅も大きくなります。
事故物件の探し方
賃貸における事故物件の告知義務は事故後最初の入居者にだけあるので、事故物件をあえて借りようとしている人は、事故後最初の入居者になる必要があります。
基本的に2人目以降では告知する必要がないので、家賃も事故前の金額に戻ってしまうと考えられます。
事故物件はタイミングの問題もあるので、なかなか狙って住むのは難しいと言えるでしょう。
では事故物件はどのように探せばいいのでしょうか。
大手賃貸サイトの「SUUMO」では、関東、東海、関西、九州などエリア単位で「キーワード検索」することができます。
キーワード欄に「心理的瑕疵」と入力して検索すると、事故物件(心理的瑕疵物件)が出てきます。
各地方でどれぐらいの事故物件が掲載されているのか調べてみました。
北海道:7件
東北地方:13件
関東地方:119件
甲信越・北陸地方:2件
東海地方:36件
関西地方:70件
中国地方:46件
四国地方:0件
九州・沖縄地方:8件
(2020年4月時点)
やっぱりあまり数はないですね。
しかも同じ物件が何件も出てくるので、実際にはもっと少ないということです。
安い物件だと2万円前後の物件も出てきますが、次回更新時に家賃が値上がりしたり、短期解約で違約金が設定されている物件が多いです。
「告知事項あり」や「心理的瑕疵あり」が全て人が亡くなった物件とは限りませんが、家賃が極端に安ければ「訳あり物件」であることに間違いはないでしょう。
気になる方は下記の例文のようにメールで問い合わせてみると良いでしょう。
メール例文
この物件の掲載を見て、家賃がかなり安いので入居を検討しています。
備考欄に「心理的瑕疵あり」との記載がありましたが、この物件の心理的瑕疵とはどういったものでしょうか?
その回答を待って心理的瑕疵が気になるものではなければ入居を考えればいいですし、「それはちょっと…」と思うならやめておけば良いでしょう。
実際に事故物件への問い合わせは多いらしいですし、記憶に新しい神奈川県座間市で9人の殺害遺体が発見されたアパートでさえ、すでにあの部屋に人が住んでいますからね。
家賃は半額らしいですよ。
告知の範囲
事故があった事実をいつまで遡って告知するのかは明確な基準がありません。
殺人事件や集団自殺(一家心中)など、事件性が大きければニュースなどでも報道されるでしょうし、1年や2年でその事実が風化することはありません。
事故の内容や規模が大きければ大きいほど住民の周知性も高くなります。
そのような場合には、2人目以降の入居者の場合でも数年間は心理的瑕疵があるとして告知される場合もあります。
事故物件を見分ける方法
上記で説明した通り賃貸の告知義務は明確な決まりがないため、基本的には事故後最初の入居者にのみ告知されます。
2人目以降の入居者には告知されないケースが多いので、もしかするとアナタが入居しようと思っている部屋が数年前は事故物件として扱われていたかもしれません。
不動産屋が告知してくれないのにどうやって事故物件だったのか見抜けばいいのー!という方のために、傾向的に事故物件の特徴をご紹介します。
家賃が安い
事故物件は相場より家賃が安く設定されていることが多いです。
事故物件の場合、心理的瑕疵の度合いによって相場の20%~50%程度安くなると言われています。
家賃が安い理由には駅から遠いなどの立地的な条件や、築年数が古いなど、色々な理由がありますが、特に思い当たる理由がないのに不自然に家賃が安いと事故物件の可能性があります。
定期借家契約
2年毎に更新を行う普通借家契約とは反対に、更新のない「定期借家契約」というものがあります。
定期借家契約は初めから一定の契約期間が定められていて、契約期間が終わる賃貸借契約が終了し、借主は退去しなければいけません。
一般的には家主が海外出張などで数年間家を空けている間、期間限定で賃貸として貸し出すという場合に用いられる契約方法です。
しかし、事故後最初の入居者に格安の家賃で長く住み続けられるのを回避するため、定期借家契約で早く退去してもらい、告知義務を無くして事故前の家賃で貸し出す「物件ロンダリング」に用いられる手法の一つでもあります。
不自然なリフォームが行われている
孤独死や自殺、殺人があった部屋はそのままでは次の人に貸すことはできません。
特定の部屋だけが綺麗にリフォームされているとか、室内の一部だけが不自然にリフォームされていると、事故物件の可能性があります。
アパートやマンションの1室全体をリフォームすると100万円ぐらいの費用がかかります。
大家さんもなるべくお金をかけずに解決したいですから、簡易的な修繕を行い、結果的に不自然なリフォームとなってしまうのです。
物件の名称が変更されている
噂はすぐに広まるもので、自殺や他殺があった物件はすぐに知れ渡ります。
凄惨な殺人事件が起きればニュースでも報道されるでしょうし、物件名を公表しなくてもSNSやネットであっという間に知れ渡ります。
悪い意味で有名になってしまうとそれだけで入居希望者が減ってしまうため、マンション・アパート名を変更する大家さんもいます。
実際の物件と地図上で物件名が異なっていると、最近変更した可能性があります。
入居した人が次々に退去する
募集の段階ではなかなか見極めにくいかもしれませんが、短期間で住人が次々に退去する物件はやはり何かあるのかもしれません。
よく事故物件に住んだことがある人の恐怖体験をネットで見かけますし、芸能人も下積み時代に事故物件に住んだ恐怖体験を語ってますね。
霊感の有無や霊の存在を信じる信じないによって受け止め方は人それぞれだとは思いますが、頻繁に入居者が入れ替わる物件はいくら家賃が安くても住むに耐えない理由があるのだと思います。
私は引越しの際には必ず「前ここに住んでた方はどんな方だったんですか?」とか「どうして退去されたんですか?」と不動産屋に聞くようにしています。
自分の直感が拒絶する
事故物件を見抜く方法としては説得力に欠けると思いますが、私が最も重要視しているのは自分の直感です。
内見時に実際に部屋に入ってみてどう感じたか、これってすごく重要だと思うんです。
内見時は通常ハウスクリーニングが入った後ですし、家具が何もない部屋なので綺麗で広く感じるものです。
それなのに、なぜか圧迫感を感じたり居心地の悪さを感じたら、それはアナタの直感が「この部屋はやめとけ!」と拒絶しているのかもしれません。
長期間空き部屋だと下水の臭いが上がってくることがありますが、それとは別に何か嫌な臭いがするとか、室内の空気が不快に感じるとか。
私も希望の条件に見合う部屋だったのに、実際に内見して断った部屋があります。
事故物件まとめ
事故物件についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
私自身は事故物件に住んだことはないのですが、私の周りにも「全然気にしないから事故物件に住みたい」という人はいます。
確かに割り切れる人にとっては、家賃が安くてお得な物件かもしれません。
事故物件だからといって必ずしも幽霊が出る怖い物件ではないですし、そもそも誰も亡くなっていない物件だってあります。
賃貸サイトで「心理的瑕疵あり」や「告知事項あり」と記載されていたらまずはメールで問い合わせてみましょう。
それを聞いてみないと何も始まらないですし、聞いてみたら「なーんだそんなことか」と思う程度のことかもしれません。
実際に事故物件に住んだことがある人は、そのお得さと快適さから次も事故物件を選ぶ人が多いそうです。
訳あり物件でも家賃が安くて快適なら、それは確かにお得と言えるでしょう。
アナタは事故物件に住めますか?