賃貸物件を借りる際の契約は非常に重要なものです。
「賃貸借契約書」や「重要事項説明書」などは難しい言葉が多く、説明を聞いても何だかよく分からないという印象を抱く人も少なくないと思います。
しかし、よく分からないままサインをしてしまうと後々大変なトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあります。
この記事では賃貸契約の流れとポイントを解説したいと思います。
重要事項説明について
賃貸契約の流れは「重要事項説明」と「賃貸借契約」という、二つの工程で進んでいきます。
不動産会社は賃貸契約を締結する前に、国家資格保有者である「宅地建物取引士」が入居予定者に対して賃借物件や契約条件に関する重要事項の説明をしなければならないと「宅地建物取引業法」という法律で定められています。
重要事項説明については下記の記事で詳しく解説しておりますので、こちらの記事を先にお読み頂くことをおすすめします。
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賃貸借契約書のチェック項目
「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」に記載されている内容には重複する部分が多くあります。
これは賃貸借契約書の中の特に重要な部分を抜粋して重要事項説明書に記載しているためです。
しかし、重要事項説明書の中にも契約書と読み合わせをしなければ内容が把握できないものや、契約書にしか記載されていない部分もあるため、どちらもしっかりと目を通し内容を把握する必要があります。
重複している部分についても相違がないかと、内容の再確認を行いましょう。
禁止事項の確認
賃貸物件は共同住宅のため、他の入居者の迷惑になるような行為は禁止されています。
契約書に記載されている禁止事項に違反した場合、強制退去させられる可能性がありますので、どのようなことが禁止されているのかしっかり確認した上でルールは厳守しましょう。
例えば、騒音や悪臭、共用部分に私物を放置すること、危険物を部屋に保管すること等です。
他にも転貸や増改築、動物の飼育、届出していない人をしばしば宿泊させる、反社会的勢力の事務所利用等などがあります。
騒音
よくある事例としては騒音です。
大きな音で音楽を聴いたり、楽器を演奏したり、友人を呼んで酒盛りしたりすると近隣から苦情が入る可能性があります。
また、悪気はなくても「足音や生活音がうるさい」と苦情を言われる場合もあります。
家賃を払っているとは言え、自分の家ではありません。
あくまで共同住宅ですので、近隣の方に迷惑をかけないように配慮しながら生活する必要があります。
石油ストーブ・石油ファンヒーター
意外かもしれませんが、灯油を使う石油ストーブや石油ファンヒーターの使用を禁止している物件も多いです。
灯油は危険物にあたりますし、最近の住宅は気密性が高いので燃焼器具の使用は危険だからです。
気密性の高い住宅で燃焼器具を使用すると、次第に酸素が薄くなり、不完全燃焼を起こし、最悪の場合一酸化炭素中毒で死亡する可能性があるのです。
暖かくてついうたた寝なんかしてしまうと、永遠に目が覚めないかもしれません。
家の中でしか使わないし、バレなければ問題ないと思うかもしれないですが、火災になった時の責任は重大ですし、灯油を買いに行くところを目撃されたらアウトです。
ペットの飼育
無断でペットを飼って追い出されるというのもよく聞く話です。
ペット可物件ではない物件で動物を飼育した場合、まず間違いなく退去を言い渡されるでしょう。
ペットを手放すか、ペット可物件に引越すかの二択しかない訳ですが、間違っても…
ペットを捨ないでください!
動物に罪はないですし、ペットにとっては飼い主が全てです。
ペット可物件に引っ越してください。
ペット可物件は希少ですし、家賃も割高なところが多いので物件を探すのも大変ですが、賃貸物件でペットと暮らしたいなら必ずペット可物件に住みましょう。
「ペット可物件専用の検索サイト」や、賃貸サイトでこだわり条件の「ペット可」にチェックを入れて検索してください。
余談ですが、私もペット可物件で愛猫と一緒に暮らしています。
解約方法の確認
賃貸借契約は一般的に2年毎の契約になると思いますが、契約期間の途中であっても解約することができます。
その場合、どのような手段でいつまでに解約の通知をする必要があるかが記載されています。
通常、退去日の一ヶ月前までに連絡をすることが一般的ですが、不動産会社によってはもっと前から退去連絡をしておかないといけないところもあるかもしれませんので契約書で確認しておきましょう。
また、通知方法は電話連絡のみでOKのところも多いですが、書面を郵送または持ち込みしなければ受け付けてくれないところもあり、書面が届いてから30日後に退去と扱われる不動産屋もあります。
その場合、退去日より早く引っ越したとしても家賃は退去日まで払い続けなければいけないのでしっかり確認しておきましょう。
また、退去の連絡はなるべく早めに行うよう心がける必要がありますが、一度退去連絡をすると取り消すことができない場合があるのでその点もご注意ください。
敷金の精算と原状回復
最もトラブルが多いのが退去時の敷金返還についてです。
借主は退去する際に原状回復して明け渡すこととされています。
この「原状回復」の解釈にズレが生じてトラブルになるケースが多いです。
借主の不注意でつけた傷や汚れ、破損した設備などは入居者の負担で修繕しなければいけません。
通常の生活でどうしてもついてしまう傷や汚れなどは「経年劣化」にあたるので、借主が負担する義務はないのです。
しかし、この経年劣化の部分まで修繕費を請求されるケースもあります。
ひどい場合だと、100万円近い修繕費を請求されたという話も聞いたことがあります。
「経年劣化」とは時間の経過と共にその価値や品質が減少、低下していくことをいいます。
例えば、畳の部屋に長く住んでいた場合、家具を置いていた部分と置いていなかった部分で色が変わってきます。
この畳の日焼けによる色の変化は経年劣化にあたりますので、本来入居者が修繕費を負担する必要はないと言えます。
私も以前、この原状回復費用の請求に関して管理会社とバトルしたことがあります。
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しかし、特約事項などであらかじめ「畳の表替え費用 ○万円は全額借主負担とする」とか「退室時のハウスクリーニング費用 ○万円は全額借主負担とする」と決められている場合には、敷金から差し引かれますのでご注意ください。
「原状回復」の基準については、国土交通省のガイドラインに定められていますので、この基準に反した請求に関しては拒否することも可能です。
特約事項のチェック
最も重要と言えるのが、この「特約事項」です。
例外的に禁止されている事項や、例外的に支払わなければいけない費用などが記載されています。
これを見落とすとトラブルに巻き込まれる可能性大なので、必ず確認しましょう。
上記で記述した「畳の表替え費用 ○万円は全額借主負担とする」とか「退室時のハウスクリーニング費用 ○万円は全額借主負担とする」もこの部分に記載されていると思います。
また、「契約一時金 ○万円」とか「一年未満の解約の場合、違約金 ○万円」など、借主に不利な費用はだいたいここに記載されています。
なぜ契約書の条項の中ではなく、特約事項の中なのかというと、法律的に定められていない部分だからです。
例えば、ハウスクリーニング費用などは、借主が全額支払わなければいけないなんて、どこにも決められていません。
普通に考えると、借主、貸主の双方で折半するのが妥当だと思いますが、法律上(借地借家法)貸主(大家さん)の修繕費の負担はどうしても大きくなりますので、ハウスクリーニング費用を全額借主負担にしているところは多いです。
契約は貸す側と借りる側の双方の合意に基づいて行われるものですから、特約事項にこっそり記載してサインをもらえば契約は成立してしまうのです。
とはいえ、あまりに不利な条件で契約してしまったとしても、法律は入居者に有利にできていますので、泣き寝入りせずに不当性を主張すれば、理不尽な請求を免れることができると思います。
まとめ
冒頭でも記述したように、重要事項説明書と賃貸借契約書には重複する部分や難しい内容の部分がありますので、全てを事細かく説明するとかなりの時間がかかります。
実際には本当に重要な部分だけを説明して、あまり関係ない部分や重要度が低い部分は読み飛ばしたり、ざーっと説明して終わりという場合が多いと思います。
よく契約書を読んでみると、書いてあることは常識的なことがほとんどだと思いますが、しっかり理解しないまま契約してしまうと後々トラブルになりかねませんので、細部までしっかりと確認してから契約書にサインしましょう。