マンションやアパートなどの賃貸物件を借りる際に大家さんに預ける敷金ですが、通常、退去する際には敷金から原状回復費用(修繕費)が差し引かれ、その差額が借主に返還されます。
私も数々の賃貸物件に移り住んできましたが、この敷金返還をめぐって管理会社とバトルしたことがあります。
この記事では、実際に私が経験した敷金返還トラブルについてご紹介します。
物件の概要
私は都内の下町に一軒家を借りて住んだことがあります。
23区内のJR沿線で二階建て3DKの一戸建てが家賃9万円という超破格でした。
駅からは歩くと少し遠かったですが、自転車を使えば10分もかからないので不便さは全くありませんでした。
あまりに家賃が安いので内見に行くまでは「一体どれくらいボロ屋敷なんだろう?」「もしかして事故物件なのかな?」とか色々不安を抱いていましたが、実際の物件を見るとビックリ!
お隣の家よりも断然立派だし、家の中も全然綺麗だし、日当たりも良好。
築年数はそれなりに古かったので水回りの古さはありましたが、住むには全く問題ないレベルだったので即契約しました。
まさに掘り出しモノと言える物件でした。
初期費用
初期費用は、敷金2ヶ月、礼金2ヶ月でした。
礼金2ヶ月はかなり痛かったですが、礼金を2ヶ月払ってでも住みたいと思える好物件でした。
礼金は退去時に返ってきませんが、敷金は返ってきますので、何も引かれなければ18万円が返ってくることになります。
5年で退去
その一軒家には5年住みました。
引っ越し先は同じ最寄り駅の駅前マンションだったので、自転車で10分ぐらいの距離です。
新居に引っ越してもまだこの一軒家の退去日までは数日残っていたので、毎日仕事から帰ったら掃除をしに行きました。
私は敷金を2ヶ月分預けているし、最低でも1ヶ月分は返ってくるだろうと安易に考えていました。
敷金が3万2千円しか返ってこない…だとっ!?
退去日から二週間ほど経ったある日、管理会社から留守電が入っていたため、お昼休みに折り返しました。
と言われました。
家に帰って早速明細を見てみると…
なっ…なんじゃこりゃー!
あんなに毎日仕事から帰って一生懸命掃除したのに、ハウスクリーニング費用全額借主負担。
畳の表替え、襖、障子の張替も50~100%の割合で借主(私)の負担になっていました。
工事単価も妙に高い。
これはどう考えてもおかしい。
翌日管理会社に電話して抗議したところ「一緒に部屋を見て話し合いましょう」と言われました。
経年劣化は借主のせいじゃない
次の土曜日に、管理会社と旧居に行きました。
確かに畳にシミを作ってしまったところなどはありましたが、なぜか一部屋丸々畳の表替え費用を請求されているのです。
家具を置いていた場所と置いていなかった場所の、日焼けによる色の違いなどは、普通に生活していて起こる損耗(経年劣化)なので借主の責任ではないのです。
それにも関わらず修繕費を請求してくるのは「ぼったくり不動産屋」のやることです。
シミを作ってしまった畳の表替え費用だけを負担するようにしてもらいましたが、厳密にいうと減価償却の考え方が加味されていないのでこれもおかしいのですけどね。
正確にはシミを作った畳一枚分の費用から、経年劣化分を除いたものが借主負担になるはずです。
押入れの襖もほどんど私の負担になっていました。
確かに私の不注意で破いてしまった部分はあったのでその面の負担は認めましたが、その他の綺麗な襖については費用負担はしないとはっきり言いました。
障子の張り替え費用も半分は私の負担になっていました。
多少破いてしまった部分もありましたが、すでにかなり日焼けしていて、次の人に貸すためにはどのみち全て張り替える必要があります。
例え破いていなかったとしても、経年劣化で全面張り替える必要があるのですから、障子の張り替え費用の負担は全額なしにしてもらいました。
ハウスクリーニング費用はどっちが負担?
ハウスクリーニング費用も全額借主負担になっていました。
これは納得いかない。
仕事終わりに毎日来て一生懸命掃除したのに!
結局ハウスクリーニング費用は大家さんと折半にしてもらいました。
最近は「退去時のハウスクリーニング費用は全額借主負担」と最初から契約書に書いてあるところが多いですが、本来どっちが負担する費用かは決まっていないのです。
借主は借りた部屋を綺麗にして返す義務があるし、貸主は次の人のために部屋をクリーニングしたいという意向がある。
だから私はハウスクリーニング費用は折半が妥当だと思っています。
謎の壁のシミ
一番問題になったのが二階の部屋にできた土壁のシミでした。
一階の壁は綺麗なのに、二階の部屋の土壁には斑点状のシミが無数にできていました。
明細には二階の壁の工事費が入っていますが、全額貸主(大家さん)負担になっていました。
結局壁の負担はなしのままになりました。
工事代金の単価も妙に高いので、もっと値切るなり、業者を変えるなりするように言いました。
最終的に私の修繕費の負担額は当初の13万円から4万7千円にまで落としてもらいました。
その差額、8万3千円!
その日はとりあえずこの金額で大家さんと話し合ってくれるということで終わりました。
絶対に敷金1ヶ月分は取り戻してやる!!
勝訴!
こちらの言い分(修繕費4万7千円)で大家さんと話し合うとの事でしたが、翌日にはこちらの言い分通りの金額で敷金が返還されました。
結局、3万2千円しか返ってこなかったはずの敷金が115,000円も返ってきました。
目標の敷金1ヶ月分以上です。
てか、返せるんじゃん。
やっぱりぼったくられてた感満載です。
敷金返還トラブルのまとめ
退去時の現状回復費用(修繕費)のうち、普通に生活していて起こる損耗は経年劣化なので、借主が負担する必要はありません。
部屋の中でタバコを吸ったせいでクロスを全面張り替える必要がある場合などは、借主の責任なので全額請求される場合もあります。
また、結露を放置してカビが生えたり、掃除を怠って著しく汚した場合も借主の責任になる場合があります。
それ以外の障子や襖の日焼け、家具を置いていた場所と置いていなかった場所の日焼けによる畳の色の違いなどは経年劣化ですので、本来借主が負担する必要はない費用です。
私も不動産屋に言われるまま承諾していたら、8万円以上も損していたところでした。
今回論争となった壁のシミですが、敷金返還トラブルの原因の多くは、こういった見解の違いで起こります。
管理会社は借主(私)の過失だと判断していましたが、私は普通に生活していて起こった損耗だと主張しました。
もちろん、私の不注意で畳にシミを作ったり、襖や障子を破ったりしてしまった部分はありましたが、その部分については素直に認め、修繕費を支払いました。
しかし、普段から「借りている部屋」という認識を持って掃除もきちんとしていましたから、それ以外の修繕費が請求されることは通常ないはずです。
二階の壁のシミについては、確かに台所で料理をすると換気扇をつけていても階段の壁が湿っていたことがあったので、湿気によるカビだと思います。
特にひどかった北側の部屋は、私も湿気がこもりやすいと感じていたので、普段から窓を開けて換気するようにしていました。
確かに掃除を怠って著しく汚損した場合は借主に責任がありますが、湿気を気にして換気するなど、できる限りの対策はしたつもりですので、管理義務は果たしたと思っています。
それでも防ぎ切れなかったのですから、建物の構造的な要因があると私は思います。
最後に私が言いたいのは、賃貸物件は「借り物」ですので、常に「借りている部屋」という意識を持って生活する必要があるということです。
私のケースのように借主側と貸主側での見解が食い違った時に、普段から「借りている部屋」と意識して生活していた人なら、自分の過失か否か、管理義務を果たしたか否かをはっきりと主張できると思います。
貸主側がなかなか折れてくれない場合もあると思いますので、その場合はしっかりと話し合い折り合いをつけましょう。
「原状回復」の基準については、国土交通省のガイドラインに定められていますので、この基準に反した請求に関しては拒否することも可能です。
【参考】
国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について