近年、地球温暖化の影響なのか異常気象とも言える集中豪雨や台風などの災害が毎年発生しています。
2018年に起きた西日本豪雨(正式名称:平成30年7月豪雨)では広島県、岡山県、愛媛県など、西日本の広い地域に土砂災害や河川の氾濫・堤防決壊による甚大な浸水被害をもたらしました。
2019年は台風15号と台風19号が特に甚大な被害をもたらし、東日本から東北にかけての広範囲で河川の氾濫・堤防決壊を引き起こしました。
2020年は線状降水帯の停滞で九州や中部地方に甚大な被害が出ました。
今年(2022年)も猛烈な勢力の台風で九州に被害が出ましたし、線状降水帯の発生で静岡県で大規模浸水が起こりました。
これだけ毎年集中豪雨や台風による被害が出ているので、今被害が出ていない地域も明日は我が身です。
日本のどの地域に住んでいても台風や豪雨、地震による自然災害に遭う可能性は誰にでもあると言えるでしょう。
私の故郷(岡山県倉敷市)は2018年の西日本豪雨で被災しました。
河川の堤防が同時多発的に決壊し、町内だけで51名の方が亡くなりました。
幸い私の実家は少し高台に位置していたため浸水被害は免れましたが、親戚や同級生達の家は2階まで浸水し、多くの人が避難所生活や町から出て行くことを余儀なくされました。
住宅の浸水被害というのは想像以上に深刻で、濡れた家財はほぼ全滅しますし浸水した部分は泥にまみれるので、泥の除去作業がかなり大変です。
水を含んだ泥は重いですし乾くと除去が難しくなり、砂埃が立ち込め感染症を引き起こす可能性があるので衛生的にも非常に悪い状態になります。
住宅の基礎の部分は濡れてしまうとそこから木材が腐ってしまうので、床を剥がして完全に乾燥させなければそのまま住み続けることが難しくなります。
またライフラインの復旧に時間がかかる場合もあり、停電や断水などが長期間に及ぶこともあります。
話しを戻しますが、現在賃貸住宅にお住まいの方は、賃貸に住んでいてもしもこのような浸水被害に遭ったらどうなるんだろう…?
どこまで保険で補償されるの?
引越し費用は出るの?
新しい住まいの初期費用は?
など、このような疑問を抱いたことがあると思います。
この記事では、賃貸住宅が自然災害で被災した場合、どの程度保険で補償されるのか、入っておきたい保険の種類等を解説したいと思います。
建物や設備の破損は大家さん負担で修繕する
地震や津波、台風や集中豪雨などの自然災害であなたが住む賃貸住宅の建物に損傷があった場合は、全額大家さんの負担で建物を修繕することになります。
賃貸物件は大家さんの所有物ですからね…。
大家さんもこのようなリスクに備えて火災保険や地震保険などに加入していますので、そこから保険金が下りるようになっています。
災害によって損壊したところを見付けたら速やかに管理会社等に連絡し修繕を依頼しましょう。
ただし、明らかに借主(入居者)の過失で建物が損壊した場合などは、修繕費を請求される場合があるので注意が必要です。
【借主負担となる例】
・台風が来ると事前に分かっているのに窓を開けたまま外出して壁紙が破損した
・ベランダに置いていた植木鉢が強風で倒れて窓ガラスが割れた
・契約上禁止されている危険物を置いていて爆発、出火した
住めなくなるほど賃貸住宅の損傷がひどい場合
火災で住んでいた賃貸住宅が全焼した、地震でアパートが崩れた、水害で水没したなど、自然災害の被害が大きくそのまま住み続けることが出来なくなってしまう場合も考えられます。
物理的に住めない状況なのですから賃貸借契約は終了し、入居者は転居を余儀なくされます。
(修繕をすれば住めるレベルであれば賃貸借契約は継続します)
その際、敷金は返ってくるのか?と言う不安と、引越し費用は請求出来るのか?という疑問が生まれると思います。
まず、敷金は返還されますので安心してください。
修繕をすれば住めるけれど、建物が一部破損して住み続けるのが不安だから引っ越したいという場合は、借主都合の転居なので通常の退去の際と同じくハウスクリーニング代や借主の過失で傷付けてしまった部分の修繕費を差し引いた残額が返金されます。
次に引越し費用ですが、自然災害で賃貸住宅が住めなくなるほど損壊するというのは不可抗力であり、貸主(大家さん)にその責任を問うことはできません。
入居者が住むところを失い転居を余儀なくされても、それは誰の責任でもないので大家さんに転居費用を請求することはできません。
大家さんも被害者なのです。
大家さんに転居費用の請求はできませんが、賃貸住宅に入居する際に借主が加入する火災保険(家財保険)の内容によっては、転居費用の補助が下りる場合があります。
家の中の家財(家具・家電)は大家さんの補償対象外
建物や設備の被害については大家さんの負担で修繕してもらえますが、家の中の家財に損害が発生した場合はどうでしょうか。
実は、自然災害で家の中の家財が損壊した場合や、地震などで家具が倒れてきて入居者がケガをしてしまった場合、大家さんは補償してくれません。
建物を所有者である大家さんが修繕するように、家財道具に関しては所有者である借主の負担になるため、大家さんに賠償請求はできません。
入居者のケガに関しても、そもそも自然災害は誰の責任でもないので「あなたの賃貸物件に住んでいたせいでケガをした!治療費払え!」ってのはおかしな話です。
むしろ地震で家具が倒れてケガをしたとかなら、家具を固定してなかった入居者自身に非がありますよね。
このように自然災害による損壊は、部屋の外は大家さん、部屋の中は借主と切り分けて覚えると良いでしょう。
ただし、適切に大家さんが物件を管理していなかったせいで被害が拡大した場合には、大家さんに賠償請求ができる場合もあります。
【大家さんに賠償請求できる一例】
・以前から窓ガラスの修理を依頼していたのに対応してもらえず、台風が来て家財が破損した
借主が賃貸契約時に加入する火災保険について
賃貸物件の契約時に入居者は火災保険に加入しますよね。
一般的には2年で20,000円ぐらいが相場だと思います。
「火災保険」と聞くと火災による損害を補償してくれるイメージを持っている人が多いと思いますが、賃貸向けの複数の保険を一括りに「火災保険」と呼んでいるだけで、厳密には「家財保険」「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の3つに分けることが出来ます。
家財保険
文字通り、自分の所有する家財の損害を補償するものです。
補償される損害原因は、火災、落雷、爆発、水害、水漏れなどが主な対象となります。
家財の他に現金や預金の盗難も対象となるのが一般的です。
「自分の財産を守る保険」だと思ってもらえると良いかと思います。
上記の他、災害や被害に遭った場合に使えなくなった家財の処分費用や住めなくなった際の臨時宿泊費、引越し費用の補填など補償内容は保険会社のプランによって多岐に渡ります。
自身が加入している保険の補償される損害原因に、火災の他、水害や地震が含まれているか確認しておくと良いでしょう。
借家人賠償責任保険
あまり聞きなれない「借家人賠償責任保険」ですが、これが賃貸に必須の保険と言っても過言ではないです。
「借家人賠償責任保険」とは、入居者の過失で借りている部屋に損害を与えてしまった時に、原状回復するための費用を補償するというものです。
「大家さんのために入る保険」だと思ってもらえると良いかと思います。
借主は借りている部屋を退去する時には、借りた時と同じ状態にして大家さんに返す義務があります。
これを現状回復義務と言いますが、自分の過失で火事を起こしてしまったり水漏れを起こしてしまった場合でも、現状回復して大家さんに返却しなければいけません。
自腹でこれを修繕するとなると、何百万~何千万円ものお金が必要になります。
そんな高額なお金を払える人なんて…いないですよね?
その際に役立つのがこの「借家人賠償責任保険」です。
賃貸の火災保険には必ずこの「借家人賠償責任保険」が含まれています。
ただし、補償対象はあくまでも自身が借りている部屋に損害を与えてしまった場合に限られるので、例えば火事が隣の建物に広がって損害を与えた場合は、この保険では補償されません。
個人賠償責任保険
「個人賠償責任保険」は、日常生活のトラブルや身近な事故を補償してくれるものになります。
ケガをさせてしまった相手への治療費や慰謝料、他人の物を壊してしまった時の損害賠償などが対象となります。
「他人に損害を与えてしまった時の保険」と考えてもらえると良いかと思います。
この補償内容も多岐に渡っており、上記の保険で補償されなかった自分が起こした火事が隣の建物に広がって損害を与えた場合や水漏れで階下の部屋に損害を与えた場合、飼い犬が他人に噛みついてケガをさせしまった場合なども補償対象となります。
ただ、この「個人賠償責任保険」は自動車保険や損害保険の特約として加入することが多いので、すでに加入している保険がある場合は重複しないように気を付けてください。
重要なのは補償される損害原因と金額
自然災害で家財が損壊した際に、契約時に加入した火災保険(家財保険)が大いに役立つことはお分かり頂けたかと思います。
しかし、契約時によく確認して頂きたいのは「どんな災害(被害)の時にいくら保険金が下りるのか」です。
家財保険の中に水災保険が含まれていないと、台風や集中豪雨で床上浸水した場合でも保険金が下りない可能性があります。
阪神淡路大震災では多くの家屋が火災で焼失しましたが、地震が原因で起きた火災には通常の火災保険が適用されず大きな問題となりました。
当時はまだ地震保険があまり世間に認知されていなかったからです。
東日本大震災では地震による津波で多くの家屋が流されました。
火災には火災保険、地震には地震保険、水害には水災保険とそれぞれの災害に対応した保険があるんですね。
もはや日本に安全なところなんて無いですね…。
日本のどこに住んでいても自然災害に遭う可能性は誰にでもあると言えるでしょう。
そのために、地震・噴火・津波・雷・火災・水害に対応した保険に入っておきたいものです。
今一度、ご自身の加入している保険を見直してみてください。
火災保険(家財保険)は自分で選べる
賃貸契約時に加入する火災保険(家財保険)はほとんどの人が不動産屋が提示した保険会社のプランをそのまま契約していると思います。
不動産屋は保険会社の代理店も兼ねているので、この契約を取り付けることで代理店報酬を得ています。
あまり知られていない事実ですが、実は賃貸の契約時に加入する火災保険(家財保険)は自分で選んでも良いのです。
不動産屋が提示した補償内容が気に入らなければ自分で納得できる補償内容の保険に入ればいいのです。
その際に必須なのは「家財保険」と「借家人賠償責任保険」です。
この二つの保険が含まれていれば、どこの保険会社の保険を選んでも良いのです。
また転居した場合も、今加入している保険を引き継ぐことも可能です。
(更新時期がズレるのがちょっと面倒ですけど…)
賃貸の場合は2年契約の保険に加入していると思いますが、途中解約すれば残りの月分の保険料が返金されます。
我が家の火災(家財)保険の内容を公開
私も賃貸住宅に住んでいますので、参考までに我が家の保険内容をご紹介します。
保険金名 | 保険金額 | |
---|---|---|
災害・事故保険金 火災、落雷、漏水などの事故によって家財に損害が生じた場合 |
350万円 | |
盗難保険金 盗難により家財に損害が生じ、警察へ盗難届を提出した場合 |
||
水害保険金 床上浸水により家財が損害を被った場合 |
||
借家人賠償責任保険金 貸主、または第三者に対し損害を与え、法律上の賠償責任を被った場合 |
2,000万円 | |
失火見舞費用保険金 災害・事故保険金が支払われる場合で、火災、破裂または爆発により第三者に被害が及んだ場合 |
70万円 | |
ドアロック交換費用保険金 盗難保険金が支払われ再発防止のためのドアロックを交換した場合、ドア鍵を盗まれた場合、ドアロックがいたずらにより使用不能となった場合 |
3万円 | |
修理費用保険金 火災、漏水、盗難、凍結、不測かつ突発的な事故などによって借用戸室に生じた損害の修理費用を入居者が負担した場合 |
100万円 | |
地震転居支援保険金 地震等で借用戸室が半壊以上の被害に遭い、転居した場合 |
5万円 | |
臨時宿泊費用保険金 災害、事故保険金などが支払われ、かつ電気、ガス等が使用不能で居住できなくなったために臨時宿泊費を入居者が負担した場合 |
20万円 | |
災害・事故転居支援保険金 災害・事故保険金などが支払われ、かつ電気、ガス等が使用不能で居住できなくなったために転居費用や賃貸借契約書費用を入居者が負担した場合 |
40万円 | |
競売物件敷金保険金 入居物件が抵当権の実行により競売され、旧賃貸人から敷金等が返還されなかった場合 |
30万円 |
保険料は2年一括払いで20,000円。
こちらは不動産屋から提示された保険ですが、補償内容が充実していたのでそのまま契約しました。
一人暮らしの方や家財の少ない方は、家の中の家財を全部買い替えても100万円ぐらいで足りる方もいると思います。
その場合はもっと補償額の少ないプランにすることで保険料を安く抑えられます。
自分の家財と補償金額が見合っているか、自分の住んでいる地域で起こり得そうな災害に対応しているかをよく確認することが大切です。
水害にあったときに
もしもあなたが水害に遭ってしまったら…途方に暮れてしまいますよね。
まず何から始めてどのように生活を再建すればいいのか…想像つかないですよね。
2018年の西日本豪雨で私の故郷が被災した時に、自宅が水没した同級生達にネットで見付けた下記の資料をLINEで送ったらすごく役に立ったと喜んでくれましたので、皆さんにもご紹介します。
これは「震災がつなぐ全国ネットワーク」さんが公開している「水害にあったときに_チラシ版_第4版201910」という資料です。
実際の被災者が役に立ったという資料ですから、是非皆さんにも知って頂きたいです。
また「水害にあったときに_冊子版_第5版201910」という資料もありますので、併せてご確認ください。
この記事が皆様の参考になれば幸いです。